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007 株式会社スペクター・コミュニケーションズ

海外の映像の買付販売で各メディアから絶大な信頼とシェアを誇る「株式会社スペクター・コミュニケーションズ」独自ルートによる世界最速レベルの“情報収集力”と「何がウケるか」を見極める“選定眼”を強みに国境を越えて事業を展開するマスメディア

入口で出迎えてくれるのは「Reindog」――トナカイ(Reindeer)と犬(dog)をミックスした架空の動物。その鼻をよく見ると……立体的!? 訪れる人を楽しませる遊び心が

事務所探訪第7回は、「株式会社スペクター・コミュニケーションズ」です。タレント・エッセイストとしてもご活躍の青木京子(タレント名:京子スペクター)さんが、パートナーで放送プロデューサーのデーブ・スペクターさんを共同経営者として、昭和63年に設立しました。

都心のビジネスエリア・紀尾井町に東京オフィス、映画やテレビ業界の事務所が集まるロサンゼルスのセンチュリーシティにU.S.A.オフィスを構えています。日本とアメリカを拠点に、海外番組・映像・写真の買付販売、テレビ番組やCMの企画・制作、タレントマネージメントなどの事業で飛躍的な発展を遂げてきました。そこには、「熱心に、誠実に、また確実に」、ひとつひとつの案件をこなしてきた積み重ねがあるといいます。

今回は、代表取締役の青木京子さんにお話をうかがいました。

■ 設立27周年、「無理せず、堅実に」を貫いてきた

弊社は今年で27周年を迎えますが、無借金経営でやってきました。芸能界は厳しいところです。弊社のようにタレント数人、スタッフ数人という小さな会社はいつ潰れてもおかしくありません。バブル期に銀行から「もっと事業を大きくしてはどうか」と融資を提案されたこともありますが、無理はしたくありませんでした。小さな会社なりにできることを堅実にやっていくだけです。

レストランの経営や多くのタレントのマネージメントなど、自分たちの身の丈を越えたことに手を出すことはしませんが、今を維持するだけでは進歩がありませんので、目標をひとつずつもってステップアップしていかなければと思っています。例えば、設立当初は狭いオフィスにいたので、「もう少し広いところに」という目標がありました。今は、このオフィスも手狭になってまいりましたので、さらに“もう少し”広いところに移りたいという目標をもっています。

■ 海外で仕事がしやすい「社名」

「京子スペクター」名義でタレント、エッセイストとしても活躍する青木京子さん。平成27年1月にはアルバニア共和国名誉領事に就任

事務所を立ち上げる前はホテルの一室を借りて、住居兼仕事場にしていました。デーブは当時ほかの芸能事務所に所属していましたが、「自分たちでできるのではないか」と独立し、青山にオフィスを設けました。

スペクター・コミュニケーションズという社名は、デーブが考えました。海外では「コミュニケーション」といいますと、マスメディアのことを指します。国内の芸能事務所には、「○○プロダクション」など、さまざまな社名がありますが、海外とビジネスをするうえでもわかりやすいほうがいいと考え、この名前にしました。

ホテル生活をしばらく続けていましたが、住居を構えたのをきっかけに、平成6年に紀尾井町にオフィスを移転して今に至ります。偶然ですが、デーブが以前留学していた大学が近いんですよ。デーブは普段、自分専用の仕事場で海外とのやりとりなどをしていますが、取材などで事務所に寄るときは手土産にお菓子を持ってきてくれるなど、スタッフへの心遣いがうれしいですね。

■ オフィスの会議室もアイデア満載! 収録スタジオとして活用も

15台のテレビモニターが並び、テレビ局のスタジオのような雰囲気。世界8都市の時計は、設立以来、時を刻み続ける

オフィスのデザイン、レイアウト、ディスプレイは、すべて私のアイデアで行っています。会議室の壁一面に、デーブが仕事やプライベートで世界のスターたちとお会いしたときの写真を飾っていますが、これはクライアント様が弊社にいらしたときに、「海外情報に触れる」という印象をもっていただきたいと思うからです。

もう一方の壁にはテレビモニターが並んでいますが、ここを背景にして、収録スタジオとして使っていただくこともあります。デーブが関根麻里さんとナビゲートしていた『デーブ&麻里の海外ドラマNAVI』(WOWOW)でも使われましたし、長井秀和さんと逸見太郎さんが英語で日本の文化を紹介するYouTubeチャンネル『Unseen Japan(アンシーンジャパン)』もここで撮影をしています。

CMで使われた小道具や、映画で使われた胸像を陳列するなど、ディスプレイでデーブ・スペクターさんを紹介する工夫がされている

ホームページのデザインも私のアイデアです。トップ画面には、タレントの最新情報や、メッセージを掲載しています。最近では、デーブのTwitterが開始4年でフォロワー数62万を超えたということで(2015年4月15日現在)、フォロワーの皆さまへの感謝のメッセージを載せました。デーブのツイートにコメントしてくださった方にお返事すればいいとも思うのですが、デーブは「Twitterではギャグだけ」という方針を貫いています。それでもフォロワー数が増えているというのはうれしいですね。

■ 会社にとっていちばん大切なのは人材

東京オフィスのスタッフは、設立当初は私を含めて3名、現在は5名と、本当に小さな規模で運営しています。増員を考えることもありますが、会社に何かあったときに「じゃあ、人件費をカットしましょう」とはなかなかできません。繁忙期に臨時のスタッフを雇うことはあっても、基本的には今の体制を維持したいと思っています。東京オフィスでは、おもにタレントのマネージメントや企画などを行い、U.S.A.オフィスのスタッフには、調べ物をしてもらったり、資料を収集して送ってもらったりしています。日本の仕事においていちばん重要な“情報”をいち早く手に入れるためには、海外スタッフが欠かせませんから。まだ発売されていないアメリカの雑誌を世界でいちばん最初に入手したことも何度もあります。

きれいに整理整頓されたオフィスで働くスタッフの方々

やはり、会社にとっていちばん大切なのは人材です。誠実な方には10年でも20年でも長くいていただきたいですが、結婚や出産などでやむを得ず辞める方もいて、欠員補充が必要なときがあります。ただ、いい人材を見つけるのは本当に大変です。これはもう、運としか言いようがないですね。「履歴書は立派でも仕事はできない」という方もいますし、「興味本位で入りたい」という方は長続きしない。また、どの会社でも同じだと思いますが、勤務歴が長いと、慣れきって悪い面が出てきてしまうことがあります。例えば、「この仕事はこれくらいで大丈夫だろう」と、もう少しできるはずなのに手を抜いてしまう。そうした場合は新しい人材の採用も検討します。

■ 少数精鋭主義でタレントをマネージメント

受付には所属タレントの写真、ポスター、出版物などが展示されている

弊社の所属タレントは、デーブと私のほか、藤田紀子、桂由美と、少数精鋭でやらせていただいています。「タレントになりたい」というお問い合わせもいただきますが、一から売り出すというのは大変なことです。弊社のような小さな会社を長く存続させるためには、確実に「売れるか、売れないか」を見極めなければなりません。基準としては、誰もが名前を聞けば「ああ、あの人ね」とわかるような方でなければ、プロデュースするのには時間がかかりますね。

藤田紀子の場合、テレビ局のプロデューサーの方が弊社を勧めてくださって、「藤田さんが事務所を探しているそうなんですが……」とお話がありました。バックグラウンドもしっかりしていて、「売っていける」と確信がありました。

桂由美の場合も、ファッションデザイナー「YUMI KATSURA」として長年築き上げたキャリアがあり、「この方なら」と。コレクションに関しては今までやってこられたお仕事なのでタッチしていませんが、メディア対応を引き受けています。今年2月、桂由美50周年記念コレクション「YUMI KATSURA 50th SHINING FOREVER」を開催した際も、テレビ局に連絡して「取材に来てください」と交渉しました。コレクションのステージ上で、爆笑問題の太田光さんとタイタン社長の太田光代さんご夫妻が結婚式を挙げられました。素敵ですよね。太田社長とはときどき、お食事をご一緒しているんですよ。昨年10月、「桂由美presents日中友好アラビュー(アラウンドビューティー)ファッションショー」でゲストモデルとして出演したときにも、ご一緒させていただきました。

所属タレントについては、今後、もっと積極的に売り出していきたいですね。例えば、雑誌を読むときには、ただ読んで終わりではなく、「このタレントさんだったらこんなことができるかな」「この雑誌にコラムを連載させていただけたらいいな」などと考えながら読めば、これから先のアプローチにつながっていきます。

■ タレント「京子スペクター」としてもチャンスを逃さない

私自身、タレントとして、デーブとテレビ出演することがありますが、デーブのほうが話し上手ですし、「私は黙っていたほうがバランスもいいだろう」と思い、あまり話さなかった時期がありました。夫婦一緒になって言いたいことを言うと、観ている方は引いてしまうのではないかと……。しかし、その考えは間違っていました。ある日の収録後、デーブから「あなた、ギャランティーをもらっているでしょう。それなのに何も話さなかったら出る意味がない」と言われました。「そうだ。アメリカにいたときも、『自分の意見はきちんと言わなければいけない』と学んできたじゃないか」と思い出しました。話すべきことは積極的に話す。それによって失敗するかもしれませんが、試してみなければ失敗も成功もないのです。

また、私には「与えられたチャンスは絶対に逃したくない」という信条があります。テレビ番組で「こういう企画に出ませんか?」とオファーをいただいたときに断ってしまうのはもったいないことです。普段はできない経験ができ、自分のプラスになるのですから。逆に「こういう番組に出たい」と思ったときには、弊社のほうからテレビ局に企画を提案させていただくこともあります。

■ 世界的なニュースを惜しげもなく各テレビ局へ伝達

「世界中から情報を集めて、どこももっていない映像の使用権を買い付ける」という業務は、デーブに100%依存しています。海外のメディアには国内とは比較にならないほど膨大な量の情報があります。1日に何百本という数の映像が入ってきますが、ただ輸入して終わりではありません。その中から「これはウケる」というものを探し出すのです。ターゲットに合わせて、興味をもってもらえそうなものを――これが、日本の映像を海外に輸出する場合も重要になります。

おもしろいものをどこよりも先に見つけてくる、情報収集力と着眼点のよさが弊社の強みです。「ウケるか、ウケないか」の判断は、テレビ業界の方でも難しいことがあります。デーブは、アメリカの三大ネットワークのひとつであるABCテレビの番組プロデューサーとして修業を積んでいましたし、目のつけどころが違います。YouTubeにアップロードされた映像を買い付けることもありますが、デーブが出演した番組で紹介したあと、各局で同じ映像が紹介されていることがよくあります。

日本時間の3月6日朝7時半頃、ハリソン・フォードさんが操縦していた小型機が墜落したというニュースがありましたね。その情報は、デーブがいち早く入手して、各局に電話して伝えました。デーブは情報を独り占めするのが好きではありません。事故から3時間後には、デーブの出演番組で、平成25年9月にハリソン・フォードさんがサンタモニカ空港で同機を操縦していた映像を流し、独自のルートから得た最新情報をコメントで加えました。

出ては消えてゆく芸能界でデーブは25年以上、コメンテーターとして活躍しています。日本人・外国人を含めて、これほど長く出続けている方は、ほかにいらっしゃらないのではないでしょうか? コメンテーターとして出演している番組はもちろん、他局の方々からも、「デーブさん、何か情報はありませんか?」と毎晩のように電話がかかってきます。デーブがどの局にも惜しみなく情報提供し、揺るぎない信用を築いていったからこそ、コメンテーターとして長く出演させていただけるのだと思います。

■ 自社プロモーションは「映像提供のクレジット」だけ

現在は、テレビ局に映像を提供した際、同一画面に「映像提供:スペクター・コミュニケーションズ」とクレジットを入れていただいておりますが、これはここ数年のことです。デーブの意向で長年クレジットを明記しない方針できましたが、「それではダメだ」と、デーブを十数年かけて説得し続けて、平成25年にやっとOKをもらいました。

弊社は宣伝にお金をかけていないので、クレジット以外に知名度を上げるツールがありません。クレジットをきっかけにご連絡をいただくこともあります。デーブのこだわりで、別々の番組などで同じ映像を使い回すことは基本的にしませんが、局側から「同じものを使わせてほしい」と要望された場合はご提供することがあります。

スタッフには、「番組の放送を見て、クレジットが入っていたかどうか必ず確認するように」と徹底させています。

■ 映像販売をめぐる、経営者としての心の葛藤

私は会社を経営する立場として、ことお金に関しては、シビアにならざるを得ないところがあります。デーブの商売意識は“ゼロ%以下”なので、なおさらのこと。映像を提供するときも、「二次使用なんだから、そんなに取らなくていい」とデーブは言いますが、二次使用料には二次使用料のきちんとした相場があります。私も「喜んでいただけるならどうぞ」と差し上げたいのは山々ですが、弊社も映像の著作権者に使用料を支払わなければいけませんし、それでは経営が成り立ちません。使用料額についてはその都度デーブと話し合いながら決めることにしています。

スタッフの中には、「デーブさんが言うように、儲けはなくてもいいのではないか」という意見の人もいました。意見の衝突があったとしても、社長というものは一歩先を見据えた判断をしなければいけない。嫌われ役でいいんです。

■ 今、マーケットは世界へ――“違いがわかる”を武器に海外へ日本をPR

先日、京都市さんからご相談があり、京都を世界へPRするCMを作らせていただきましたが、自治体に限らず、国のPRも行っていきたいですね。

また、企業でも世界を見据えたPRをする時期が来たと思います。今、日本のマーケットは飽和状態です。メーカーさんにしても、国内で売れていたものが売れなくなってきた。それなら、国外へ売り出してはどうでしょうか。全世界にマーケットがありますから。

今まで、大手の広告会社にお任せしてCMを作っていた企業の方にも、「海外というチョイスがある」こと、「日本と同じように、海外の主要なネットワークに流すことができる」ことを知っていただきたいと思っています。「予算がなくて国内でもCMを作れないのに、海外でできるのか」という方にも、ご予算に応じた海外PRをご提案しています。このたびその企画書が出来上がりましたので、海外での一流放送局にて、弊社ならではの「リーズナブルな価格」をモットーにクライアント様の方々にお知らせしております。

海外の映像の買付販売をしている弊社の強みは、「“海外ウケ”するものが何なのか」という着眼点をもっていること。ターゲットの違いがわかる弊社だからこそ、日本のよさをより効果的に世界へ伝えることができると思います。

■ 野望は映画製作! プロダクション名は「Reindog productions Inc.」

帰りも、青木京子さんやスタッフとともにReindogが玄関で見送ってくれた

「日本を海外に紹介したい」という目的から派生して、映画製作も構想中です。ストーリーを一から、自由な発想で作りたいと思っています。そのためには資金集めなどの問題がありますので、それをどうクリアするかが課題です。「映画制作のプロに任せればいいのに」と思われる方もいるでしょうが、「プロでなくてもできる」ということを証明したいのです。

制作プロダクションとしての名前は「Reindog productions Inc.」で、トナカイ(Reindeer)と犬(dog)をミックスした架空の動物“Reindog”のイラストをロゴマークにするつもりです。このイラストはアメリカで手に入れたクリスマスカードに描かれていたもので、版権を買い取り、オフィスの入口やホームページ、名刺にも使っています。いつか、“Reindog”が映画館のスクリーンを飾る日が待ち遠しいですね。

株式会社スペクター・コミュニケーションズ ホームページ http://www.spector.co.jp/
デーブ・スペクターさんのtwitter http://twitter.com/dave_spector
著書『デーブ・スペクターの作り方』 http://www.tokyo-shoseki.co.jp/books/80722/

 

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