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001 文学座

創立75周年を迎える新劇の老舗劇団「文学座」 古き良きものを大切にしながら、 今の時代にあった新しい試みに挑戦したい

稽古場を兼ねた事務所の外観にも歴史が感じられます。

「事務所探訪」第1回は、平成24(2012)年に創立75周年を迎える劇団「文学座」です。

昭和12(1937)年、久保田万太郎さん、岩田豊雄さん、岸田國士さんの3人により「真に魅力ある現代人の演劇をつくりたい。現代人の生活感情にもっとも密接な演劇の魅力を創造しよう」との思いで創設されました。創立メンバーとして杉村春子さん、戌井市郎さんらがいらっしゃいます。現在、加藤武さん、江守徹さん、角野卓造さん、渡辺徹さん、平淑恵さんら多数の俳優、女優が在籍しています。

附属の演劇研究所も今年度で51期生を迎え、現在に至るまでそうそうたる人材を数多く輩出もしています。また、すでに芸能界で活動している人が、研究所から入ってこられることもあるそうです。仲間を大切にし、人と人との関係を大切にしているからでしょう。歴史に裏打ちされた伝統を重んじる一方で、常に新しさを取り入れようとする姿勢も印象的でした。

そんな文学座について、映画放送部の部長であり、現場にも立たれている本田太郎さんにお話をお聞きしました。

■ 附属の演劇研究所を経て正式な座員に

文学座は全員が「座員」。そして附属の演劇研究所をもっています。

附属演劇研究所を設立して50年になりますが、研究所ができるまでは、座員(劇団員)になるための特別な養成機関はありませんでした。現在は、願書を出して試験を受け研究所に入り、座員になるまでには、合計で5年のプロセスを踏む必要があります。

まず、昼30名、夜30名、合計60名が試験で採用され、1年間の研究所での授業、発表会を経て、2年目から研修科にあがります。そのときに、合計で20名弱ぐらいになります。研修科の2年目(全体で3年目)が終わったところで改めて準座員というかたちになります。期によって異なりますが、5人前後だったり1人であったりします。そして準座員を2年経て、正式な座員になることができます。

■ 一つの大きなピラミッドの中で育まれる強い仲間の絆

文学座の構成は、現在、演技部が200名弱、演出部50名弱ぐらいです。そしてマネジメント部門はプロダクションとして独立しているわけではなく、ここにいる私たち社員も座員という位置づけになります。部署としては、文芸編集室、経理部、企画事業部、映画放送部があり、22名が所属しています。他のプロダクションのことはあまりわかりませんが、こういう構成は今ではもうあまりないのではないかと思います。

そうした一つのピラミッドの中にすべてがあるため、「みんな仲間」という意識が強いような気がします。商品とマネージャーではなくて、先輩と後輩という同じ座員としての仲間意識でしょうか。そういう居心地の良さに加え、俳優たちは座員になるには研究所を経る必要がありますから、他のプロダクションから来たり、出て行ったりといったこともほとんどありません。もちろん辞めていく人はいますが、きちんとしたけじめをもってくれています。それに辞めていった人も好意的で、「文学座」出身とプロフィールに書いてくれたりもします。これはうれしい反面、ちょっと複雑な気持ちだったりもするんですが(笑)。

■ 舞台、メディアは、縦割に担当を受け持つ独自のマネジメント手法

事務所内の様子。マネジメントは、基本的に取引先ごとに担当しています。

マネジメントにおいては、「この人のあの作品」という受け持ち方はしていません。例えば舞台であれば、基本的に主催者、カンパニー、劇場ごとに縦割で担当しています。劇団に所属している以上、マネージャー全員が舞台の担当を持とうという方針にしていますので、君は新国立劇場、君は俳優座劇場、君はこまつ座などというやり方です。テレビやマスコミ関係も、放送局や制作会社ごとという感じの分け方をしています。

誰々の担当というのを決めてしまうと、「何であいつばっかり。やっぱり売れているとそうなっちゃうのか」ということにもなってしまいます。プロダクションであればそれは当然かもしれませんが、ここは劇団なのでそういう例外はありません。1万円の人の仕事であろうと、100万円の人の仕事であろうとそれは同じと考えています。

■ テレビや映画の世界に積極的に進出

事務所内に貼られたさまざまな公演のちらし。早くから、テレビや映画など舞台以外の世界にも積極的に進出しています。

映画放送部というマネジメント部門については、新劇の世界では走りといってもいいでしょう。もともと、マスコミの出演に関しては、杉村春子の頃から比較的緩かったんです。当時は「舞台に立つ人間がテレビなんてものは・・・」という時代でしたが、文学座は昔からそこは柔軟で、杉村をはじめ、諸先輩たちが「どんどんやりなさいよ、それが血となり肉となって劇団に返ってくるんじゃないの」と俳優達の背中を押していたそうです。ですので、こういう部門を立ち上げるのも早かったのだと聞いています。

■ 40歳以上を対象とした「プラチナクラス」が大人気

平成21年から、シニア世代のための「文学座プラチナクラス」という俳優養成コースを始めました。40歳以上の方が対象ですが、演劇経験の有無は関係ありません。1クラス25人ぐらいで6カ月間学び、現在は4期生を迎えています。

このクラスから文学座の所属になれるわけではありません。しかし、演劇を本格的に学んでみたいという方や、人との関係を持ちたいという中高年の方から、たくさんの応募をいただいています。コース自体は一つの区切りとして6カ月間で終了しますが、その後、自主的に「プラチナネクスト」という劇団を結成され、活動を継続されています。劇団の行事があるときにはお手伝いしたい、応援したいなどとも仰ってくださるので、とてもいい関係になっているかなと感じます。逆に、プラチナネクストが芝居をやるという相談があれば、文学座の演出家がお手伝いに行くということもあります。

もともとは演劇界全体に興味をもってもらえるきっかけになれればいいなということで始めましたが、それが文学座の活動にもプラスになっているのでありがたいことだと思っています。

■ 「ライブ」を重視しつつ、映像、演劇などの企画も検討中

「どんなに便利になっても、人と人との関係はなくしたくない」と本田さん。

平成24年で創立75周年を迎えますが、古き良きものは大切にしながらも、今の時代にあった新たな試みは、考えていけたらいいなと思っています。せっかく演出家も俳優も制作者もいて、外の人脈を形作る我々のようなマネジメント部門もそろっているので、それを活用しない手はないだろうなと思っています。

また営業上ではwebの活用も視野に入れておりますが、ホームページ上に動画を掲載したり、公演のDVDを販売したりということには、まだ踏み込めていません。劇団の体質的には、むしろ「ライブ」を重視しているところもあるため、もう少し検討しつつというところですね。

しかし、「こういう人がいないかな」というお問い合わせを受けた場合に、今までは紙のプロフィールや、DVDに出演シーンをまとめて提出するのが一般的でしたが、これからは、iPadなどを使って「ここで見てみましょう」という時代も遠くないと感じますし、実際、現場ではそのようなリクエストをされることもあります。

■ 結局変わらない、人と人との関係の大切さ

情報的なことが進み、相手との受け渡しがより簡潔になりつつある現在、マネージャーという存在はいずれ必要なくなってくる時代もあるのかもという気もしています。現場に帯同することはあっても、営業のプロセスにおいては、メールや電話といった機械と機械があれば通じてしまうという時代がやってきても不思議ではありません。

反面、この世界、商品自体が「人」なので、やっぱり人と人との関係だけはなくしたくないなというのは絶対的にありますし、人間関係のそうした部分は絶対に残すべきだと思います。マネージャーとして俳優と制作者の三角関係が、人間関係としても、バランスとしても、きちんとした正三角形で保てているときというのはいい仕事ができているときだと思います。

プラチナクラスにしても、定期的にやっているワークショップにしても、演劇だけを求めているわけではない人たちを含め、人がこれだけ集まってくださるということは、やはり人とのコミュニケーションだったり、目を見て話すということを求めている人がいらっしゃるからこそだと思います。ですので、メールや情報などのコミュニケーションツールが増々進んでいっても、人間的な部分というものは逆に求められ続けていくのかなとも思います。やはり最終的には、人と人でありたいですね。

文学座ホームページ http://www.bungakuza.com/

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