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開催報告「映像における実演家の権利を考える」 芸団協CPRAシンポジウム

『季刊PRE』第13号掲載
芸団協CPRAシンポジウムで左目が入れられたダルマ

 芸団協CPRAの事務所に、15年間ずっと右目だけ入れられたダルマ(※1)があります。先日、その左目はついに実演家の手によって入れられました。平成24年10月22日に東京會舘で開かれた「『視聴覚的実演に関するWIPO北京条約(※2)』作成記念国際シンポジウム」閉会時の、全実演家の喜びを象徴するような出来事でした。芸団協CPRAは、WIPO北京条約の誕生にちなんで、欧米諸国における俳優たちの権利保護の仕組みを理解し、日本の実演家にとっての重要な課題とは何かを検証するため、今回のシンポジウムを開催しました。
 シンポジウム第一部では、マックスプランク知的財産法及び競争法研究所上席主任研究員のジルケ・フォン・レヴィンスキー女史を迎え、WIPO北京条約誕生の秘話を聴くと同時に、各条文および合意声明の内容について詳細な解説をしてもらいました。レヴィンスキー女史は、国際著作権法の権威であり、WIPO北京条約作成のための外交会議にはドイツ政府代表として参加していました(※3)。続いて、ベルギーのルーヴァン・カトリック大学名誉教授のフランク・ゴッツェン氏による講演がありました。同教授は、実演家の権利保護と知的財産法分野の専門家で、長年、芸団協の運動と実演家の権利に関する基礎研究に指導的な役割を果たしてきました。今回の講演は、おもにWIPO北京条約がEU法に与える影響について分析を行い、EU域内の動向および関連の裁判例を紹介したものです(※4)。
 シンポジウム第二部は、「映像における実演家の権利を考える」と題する討論会でした。冒頭、映像実演と制作現場特有の問題として、例えば、「交渉力に関して言えば製作者と俳優との間では歴然とした差が存在していること」、「俳優の報酬とケガ時の保証や条件などを明示する書面契約の締結がなかなか定着しないこと」、「映像作品がいくら再利用されても、創作者たる俳優たちには利益還元がなされていない」といった事例が報告されました。「これらの問題を解決するために実演家自身はまず何をなすべきか」と、パネリストたちは、こう問いかけながら議論を展開しました。さまざまな意見がある中で、いくつか印象的な発言を紹介したいと思います。「一番大切な観客に質のいい作品を届けようという思いを共有できれば、関係者は対立せずにうまく進めていくことができるのではないか」。「実演家は契約の重要性を自ら認識し、契約を通じてパートナーである製作者および利用者との間で、利用と利益配分のルールを構築していくことが大切である」。「俳優が新たに権利を付与されたとしても、正規のビジネスに悪影響をおよぼすものではなく、むしろ海賊版や違法配信への対策を講じていく上で実演家自身が表だって権利主張できる方が製作者にとっても望ましいことである」。
 今回のシンポジウムは、重要課題の検証については少なくともひとつの回答を出してくれたように思います。司会者の斉藤博新潟大学名誉教授(国際著作権法学会ALAI副会長)が閉会時に取りまとめたように、「実演家と製作者が契約するにあたり、力関係を調整するための規定の整備は必要だと思うが、その内容は実演家自身で考えるべきである。法律の整備よりも実演家がきちっと対価を得られるようにすることが重要である。関係者間で争うことが目的ではなく、争いを回避するためのビジネスモデルの構築が急務」なのです。

※1 俳優らの権利に関する国際条約の早期成立を目指し、芸団協は平成9年11月に国際シンポジウムを開催。ダルマの右目はそのときに願いを込めて入れられました。

※2 『季刊PRE』第12号「特別寄稿」の解説をご参照ください。

※3 詳細は「CPRA NEWS Vol. 66」および同シンポジウム報告書(平成24年11月30日発行)をご参照ください。

※4 詳細は、前掲3の報告書をご参照ください。

公益社団法人 日本芸能実演家団体協議会 事務局長  増山 周

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