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「視聴覚的実演に関する北京条約」って?

『季刊PRE』第12号掲載

 今年6月に誕生したばかりの実演家の権利保護のための国際条約で、世界知的所有権機関(WIPO)外交会議の開催地にちなんで、北京条約と名付けられました。
 ご存じのように、実演家はその「生の実演」については、録音や録画、放送と有線放送などの公衆への伝達を許諾する権利を有します。1961年の「ローマ条約(実演家、レコード製作者及び放送機関の保護に関する国際条約)」以来、これは万国共通の国際基準となっています。しかし、実演家の許諾を得て固定された実演については、その固定物が「録音物」(例、音楽CDなど)なのか、それとも「録画物」(例、映画やDVDなど)なのかによって実演家の権利はかなり異なっていることも、ご存じでしょうか。例えば、現在のわが国の著作権法上、市販のCDが放送あるいはレンタルに二次利用された場合に、実演家は放送局やレンタル店に対して二次使用料を請求する権利が与えられていますが、一方、映画が放送されあるいはレンタルされた場合には、実演家は何の権利も持っていません。長い間、国内外でこのような不均衡状態が続いてきました。国際規範作りに関して言えば、1996年の「WPPT(実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約)」は、議論の段階では、この不均衡状態の打破を一度は試みたものの、WIPO全加盟国の合意が得られずに、結局、デジタル時代にふさわしい実演家の保護は、「録音物」以外に固定された実演にはおよぼすことができませんでした。
 北京条約は、映像実演(視聴覚的実演)について実演家の権利を初めて全面的に規定しました。実演家には、人格権(「氏名表示権」及び「同一性保持権」)のほかに、さまざまな財産的権利も付与しました。例えば、生の実演については、「放送又は公衆への伝達を許諾する権利」及び「固定を許諾する権利」を、また、固定された実演については、「複製権」、「譲渡権」、「商業的貸与権」、「利用可能化権」及び「放送及び公衆への伝達権」を規定しました(※)。なお、実演家の権利を映画製作者に移転するか否かについては、あえて統一したルールを設けず、各加盟国の国内法に委ねることとしています。
 今後、わが国でこの条約に見合った法改正にどのように取り組むかが私たちの課題となるでしょう。

※詳細および解説は、CPRA NEWS Vol.65 P4~5をご参照ください。

公益社団法人 日本芸能実演家団体協議会 事務局長  増山 周

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